ごきげんよう。With-Time、運営者の「桐生」です。
一生モノの時計を探す旅の途中で、時計愛好家なら一度は憧れる「ジャガー・ルクルト(Jaeger-LeCoultre)」。
しかし、情報収集を進めるうちに、検索候補やSNSでふと目に入る「買ってはいけない」という不穏な言葉に、心をざわつかせている方も多いのではないでしょうか。
これから100万円、200万円という高額な投資をしようとしている方にとって、これほど不安を煽るフレーズはありませんよね。
「本当に壊れやすいのだろうか?」「資産価値が下がって損をするのではないか?」といった懸念が頭をよぎるのは当然のことです。
また、実用性の観点から見た中古市場での評判や、近年の度重なるレベルソの値上げはしすぎだという批判的な声、気になるリセールバリューの現実、さらには永遠のライバルであるカルティエとどっちを選ぶべきかという比較論、そしてレディースモデル特有の維持の難しさなど、後悔しないために知っておくべき「大人の事情」は山ほどあります。
この記事では、そんな皆様の不安を一つひとつ丁寧に解きほぐし、単なる噂レベルではない、実情に基づいた判断基準を提供します。
納得のいく時計選びができるよう、私が全力でサポートいたします。
チェックリスト
- 技術的な繊細さに起因する具体的な故障リスクと、それを回避するための使用上の作法
- 「値落ちする」という定説を覆す、レベルソの資産価値上昇と最新の市場データ
- 購入前に必ず知っておくべき、正規メンテナンスコストと修理現場の現実
- ライフスタイルや価値観別に判断する「買うべき人」と「見送るべき人」の明確な基準
ジャガールクルトを買ってはいけないと言われる理由

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まずは、なぜネット上でこれほどまでに「買ってはいけない」と囁かれているのか、その根本的な原因を深掘りしていきましょう。
このネガティブな評価の多くは、決して製品の品質が悪いからではありません。
むしろ、このブランドが「技術屋(ウォッチメーカー)」としてあまりにも純粋すぎるがゆえに発生する、「特殊な立ち位置」と「一般的なユーザーの期待値」のズレに原因があることが多いのです。
繊細で壊れやすいムーブメントの構造
ジャガールクルトが「時計業界の技術屋」として尊敬を集める一方で、その精緻すぎる作りが、日常生活においては仇となる場面があります。
ロレックスのような「実用時計の王者」と比較した際、その設計思想には明確な違いがあります。
ウルトラシン(薄型)の宿命
ブランドの代名詞でもある「ウルトラシン(薄型)」ムーブメントや、複雑な反転機構を持つレベルソにおいては、物理的な強度がスポーツウォッチとは根本的に異なるという点を理解しなければなりません。
薄型化を実現するためには、各パーツを限界まで薄くし、部品同士のクリアランス(隙間)を極小にする必要があります。
修理現場の実情として、リューズ操作の違和感や内部部品の破損といったトラブルが報告されています。
例えば、わずかな衝撃でもブリッジが歪んだり、髪の毛一本分の狂いが動作停止に直結したりするリスクがあります。
これを「壊れやすい」と捉えるか、「極限まで研ぎ澄まされた繊細な工芸品」と捉えるかで、評価は180度変わります。
反転ケースのリスク
また、レベルソ特有の反転ケースも注意が必要です。可動部が多いということは、それだけ故障のリスクポイントが増えることを意味します。
ケースと台座の隙間に埃や湿気が入り込みやすく、ヒンジ部分のボールベアリングに金属疲労も蓄積します。
「高級時計=頑丈」というイメージでゴルフやテニスなどのスポーツで使用すると、痛い目を見る典型的な例と言えるでしょう。
購入後に後悔しないためのポイント
「こんなはずじゃなかった」と後悔するパターンの多くは、購入前のリサーチ不足、特に「維持管理の難しさ」への無理解から生じます。
ジャガールクルトは、手首に乗せている間、常に持ち主に対して気遣いを求めてくるパートナーです。
- 手巻きの感触:手巻きモデルでの「巻き止まり」を指先で鋭敏に感じ取る必要があります。無理に巻けばゼンマイは容易に切れます。
- カレンダー操作の禁止時間帯:午後8時から午前4時頃の間は、日付変更のギアが噛み合っているため、早送り操作は厳禁です。これを破ると内部パーツが破損します。
- 磁気帯びへの警戒:現代社会はスマホやPCなど磁気で溢れています。繊細なヒゲゼンマイは磁気の影響を受けやすく、すぐに時間が狂います。
これらを「面倒くさい」と感じる方にとっては、間違いなく「買ってはいけない」時計になってしまいます。
逆に、この手間をかける時間こそが愛おしいと感じられる方にとっては、かけがえのない豊かな時間を提供してくれるはずです。
後悔しないためには、ご自身の性格や使用シーンと、時計の特性がマッチしているかを冷静に見極めることが大切です。
カルティエとどっちが良いか比較
レベルソやマスターシリーズを検討する際、必ずと言っていいほど比較対象に挙がるのが、同じリシュモングループの雄、カルティエの「タンク」や「サントス」です。
どちらも角型時計(レクタンギュラー)の名作を持っていますが、その性質は似て非なるものです。
| 比較項目 | ジャガールクルト (JLC) | カルティエ (Cartier) |
|---|---|---|
| ブランドの魂 | 技術屋(マニュファクチュール) ムーブメント製造のプロ | ジュエラー(王の宝石商) 美とデザインの創造者 |
| 重視する点 | 機械的な構造美、複雑機構、伝統 | 完成されたフォルム、ファッション性、ステータス |
| 所有者の傾向 | 「通」な玄人好み。 時計の中身を語りたい人。 | ファッショニスタ。 スタイルの一部として楽しむ人。 |
| リセール | モデルによるが上昇傾向。 レベルソは強い。 | 安定している。 知名度が圧倒的で換金性が高い。 |
もしあなたが、裏蓋のシースルーバックから見えるムーブメントの仕上げや、機械的なギミックにロマンを感じるなら、間違いなくジャガールクルトを選ぶべきです。
一方で、時計をファッションの一部として捉え、メンテナンスの手間を減らしつつ華やかさを求めるなら、クォーツモデルも充実しているカルティエの方が満足度は高いかもしれません。
「どっちが上か」ではなく「どっちが自分に合うか」で選ぶのが正解です。
レベルソは値上げしすぎなのか
ここ数年、ジャガールクルトの定価改定(値上げ)のペースは凄まじいものがあります。
SNSなどでは「さすがに値上げしすぎではないか?」「もう手の届かない存在になってしまった」という嘆きの声も聞こえてきます。
しかし、これは単なる便乗値上げではなく、ブランドの戦略的なポジショニング変更の表れでもあります。
かつてジャガールクルトは、パテック・フィリップやオーデマ・ピゲといった雲上ブランドにムーブメントを供給していた実績がありながら、価格はそれらより割安という「お得感」が魅力の一つでした。
しかし現在は、ブランド価値そのものを引き上げ、雲上ブランドに肉薄する価格帯へとシフトしています。
ワンポイント知識
定価の上昇は、ブランドが「安売り」を止め、真のラグジュアリーとしての地位を固めている証拠でもあります。
これから買う人にとっては痛手ですが、既存のオーナーにとっては、定価が上がることで中古相場も引き上げられ、自身の時計の資産価値が守られるというメリットもあるのです。
レディースモデル所有の留意点
女性の場合、その端正で知的なデザインに惹かれてレベルソなどを選ぶケースが多いですが、ここでも注意が必要です。
特に機械式の手巻きモデルを選ぶ場合、毎日の巻き上げ作業が、長く伸ばした爪(ネイル)への負担になることがあります。
リューズが小さく薄いため、操作にはコツが要るのです。
また、「面倒だからクォーツにしよう」と考えても、ジャガールクルトの修理代金はあくまで「高級時計基準」です。
単なる電池交換であっても、パッキン交換や防水検査、回路点検が含まれるため、街の時計屋さんでは断られることが多く、正規サービスでは数万円の出費になります。
「可愛いから」という理由だけで飛びつくと、維持費の高さに驚くことになるかもしれません。
資産面でジャガールクルトを買ってはいけないのは本当か

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「ジャガールクルトはリセールが悪い」「買ったらすぐに値落ちするから新品はやめておけ」
そんな定説を耳にしたことがある方も多いでしょう。確かに一昔前まではそうでした。
しかし、最新の市場データを見ると、その常識はもはや過去のものとなりつつあります。
定説を覆す近年の資産価値の動向
2024年以降の市場データを分析すると、ジャガールクルトの特定のモデルにおいて、驚くべき現象が起きています。
かつては購入直後に価値が半減するとまで言われたこともありましたが、現在では定価に近い水準、あるいは定価を上回る価格で取引されるモデルが登場しています。
これは世界的なドレスウォッチ回帰のトレンドに加え、ロレックスなどのスポーツモデルが入手困難になったことによる代替需要、そして何よりジャガールクルトというブランドの「本質的な価値(マニュファクチュールとしての信頼)」が再評価された結果だと言えます。
「資産価値がないから買ってはいけない」というアドバイスは、今の市場においては不正確であり、むしろ投資のチャンスを逃すことになりかねません。
レベルソの驚くべきリセール率
具体的な数字を見てみましょう。
特に注目すべきは、ブランドのアイコンである「レベルソ」です。
一部の市場データでは、レベルソ(Ref.296.1.74など)の残価率が130%〜140%近くを記録したという事例もあります。
これは、新品で購入して楽しんだ後に手放しても、購入額以上のリターンが得られる可能性があることを示唆しています。
もちろん全てのモデルがプレ値になるわけではありません。
金無垢モデルやダイヤモンド入りのモデルは依然として値落ち幅が大きい傾向にありますが、ステンレススティールの定番モデルに関しては「投資適格商品」としての側面を持ち始めています。
需要が安定しており、資産防衛の観点からも非常に優秀な選択肢となっています。
中古市場での賢い選び方とリスク
新品価格の高騰に伴い、少しでも安く手に入れようと中古市場でジャガールクルトを探す方も増えています。
しかし、ここで最も重要なのが「個体の見極め」です。
前述の通り、ジャガールクルトのムーブメントは非常に繊細です。
外装が磨かれてピカピカでも、内部で部品の摩耗や破損が進行している個体をつかまされるリスクがあります。
中古購入時のチェックリスト
- リューズの感触:巻き上げ時に「ゴリゴリ」とした異音や違和感はないか。
- 反転機構の動作:レベルソの場合、ケースをスライドさせる際に引っ掛かりがなくスムーズか。
- メンテナンス履歴:直近の「メーカー修理明細書」が付属しているか。これが最も重要です。
特にオーバーホール済みと記載されていても、それが正規サービスによるものか、販売店の提携工房による簡易的な仕上げのみかを確認することが重要です。
安物買いの銭失いにならないよう、信頼できるショップを選ぶことが、結果として資産価値を守ることにつながります。
高額な維持費と修理代への覚悟
買ってはいけないと言われる最大の理由の一つが、この維持費の問題です。
ジャガールクルトを所有するということは、継続的なコスト負担を受け入れることを意味します。
修理専門店の目安料金を見ても、クォーツ式で約37,400円〜、シンプルな機械式で約44,000円〜、クロノグラフなどの複雑時計になれば約55,000円〜という費用がかかります。
これはあくまで基本技術料であり、交換部品代が加われば、1回のコンプリートサービス(オーバーホール)で10万円を超えることも珍しくありません。
しかし、ジャガールクルトには強力なサポート体制も存在します。公式サイトで提供されている「ケアプログラム」に登録することで、国際保証期間が最大8年まで延長されるのです。
安心の長期保証を活用しよう
ジャガー・ルクルトは、購入した時計をオンライン登録することで、国際保証を最大8年間に延長できる「ケアプログラム」を提供しています。
長期にわたる安心が得られるこの制度は、所有リスクを大幅に軽減してくれます。
(出典:ジャガー・ルクルト公式サイト『高級時計の保証プログラム』)
古いモデルや複雑な機構を持つモデルの場合、部品供給の制限から正規サービスでしか修理できない「ロックイン」状態になることもあります。
購入予算ギリギリで本体を手に入れると、数年後の維持費が払えず、引き出しの奥で眠らせることになってしまいます。
ジャガールクルトを買ってはいけない人の結論
ここまで見てきた通り、ジャガールクルトは「誰にでもおすすめできる時計」ではありません。
最後に、あえて厳しい言い方をすれば、以下のような方は購入を見送るべきでしょう。
- 時計に「タフさ」を求める人: ガシガシ使える実用性を最優先するならロレックスやオメガが正解です。
- 維持費を「高い」と感じる人: 数年に一度の10万円単位の出費を許容できない場合、所有はストレスになります。
- 短期的な投機目的の人: 一部のレベルソを除き、即座に利益が出るような換金性は期待すべきではありません。
しかし、これらを理解し、繊細な機械を労わる余裕と、工芸品としての美しさを愛でる感性をお持ちの方にとって、ジャガールクルトは「買ってはいけない」どころか「人生最高のパートナー」になり得ます。
市場のノイズに惑わされず、ぜひご自身の価値観で判断してみてくださいね。
