ごきげんよう。With-Time、運営者の「桐生」です。
憧れのロレックスを手に入れるために、まずは実物を試着してみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、いざ店舗に行くとなると、事前の来店予約が必要なのか、どのような服装でお店に行けば良いのか、あるいは何も買わずに試着だけで帰ることは失礼にあたらないのかなど、様々な疑問や不安が頭をよぎるものです。
特に初めて正規店を訪れる際は、独特の緊張感がありますし、並行店であっても試着に関するルールやマナーは気になるところだと思います。
チェックリスト
- 正規店と並行輸入店における試着環境の決定的な違い
- 人気モデルを試着するための具体的なアプローチ方法
- 店員に好印象を与える服装やマナーとNG行動
- 試着を通して自分に合うモデルを見極めるための視点

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ロレックスの試着前に知るべき基礎知識
ロレックスの試着は、単に時計を腕に乗せるだけの行為ではありません。
店舗の種類によって体験できる内容が全く異なりますし、そこには暗黙のルールも存在します。
まずは、安心して試着を楽しむための基本的な知識を押さえておきましょう。
正規店と並行輸入店での対応の違い

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これからロレックスを探し始める方にとって最初の関門となるのが、「どの店に行けばいいのか」という問題です。
ロレックスを扱う店舗は大きく分けて「正規販売店(正規店)」と「並行輸入店(並行店)」の2種類が存在し、それぞれの試着環境やルールは180度異なると言っても過言ではありません。
この構造的な違いを深く理解しておくことが、無駄足を踏まずにスムーズな試着体験を得るための第一歩となります。
まず、多くの方が最初にイメージする正規販売店についてお話ししましょう。
ここは日本ロレックスと正式な特約店契約を結んでいる店舗であり、唯一「定価」で新品を購入できる場所です。
安心感やステータスは抜群ですが、2025年現在、正規店での試着には大きな壁があります。それは「圧倒的な在庫不足」です。
デイトナやサブマリーナといった人気モデルが店頭のショーケースに並び、誰でも自由に試着できるという光景は、もはや過去のものとなりました。
現在、多くの正規店では「展示専用モデル」と呼ばれる見本品がショーケースに鎮座しています。
これらはムーブメントが入っていない、あるいは販売不可として厳重に管理されている個体で、あくまでサイズ感やデザインを確認するためのツールです。

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つまり、正規店での試着体験とは、多くの場合「購入できない見本品を触らせてもらう」という形になります。
もちろん、運良く在庫があればバックヤードから実機が出てくることもありますが、それは非常に稀なケースです。
また、最近では来店予約が必要な店舗も増えており、ふらっと立ち寄っても入店すらできないことがあるため、事前の下調べが欠かせません。
一方、並行輸入店は全く異なる論理で動いています。
彼らは海外の正規店やバイヤーから独自のルートで商品を仕入れており、国内定価に縛られない自由な価格設定(いわゆるプレミア価格)で販売しています。
並行店の最大の強みは、その「圧倒的な在庫量」にあります。
正規店では何年通ってもお目にかかれないような超レアモデルや、生産終了したヴィンテージモデルであっても、並行店に行けばショーケースにずらりと並んでいるのです。
「それなら並行店で試着すればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、ここにも落とし穴があります。
並行店で販売されている「新品」は、商品価値を維持するために保護シール(シュリンク)が貼られたままであることがほとんどです。
多くの並行店では、新品商品の試着を「保護シールを剥がさず、腕に乗せて雰囲気を確かめるだけ(あてがい)」に制限しています。
なぜなら、一度でもバックルを通して腕に装着してしまうと、ベルトに微細な痕跡が残り、「新品」として販売できなくなってしまうからです。
その瞬間、商品の価値が数万円から数十万円も下落してしまうため、お店側としても神経質にならざるを得ないのです。

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店舗タイプ別の試着環境まとめ
| 項目 | 正規販売店 (Authorized Dealer) | 並行輸入店 (Gray Market) |
|---|---|---|
| 在庫状況 | 常に枯渇気味。人気モデルは店頭にない。 | 豊富。即日持ち帰り可能。 |
| 試着対象 | 主に「展示専用モデル」。在庫があれば実機。 | 新品は制限あり(あてがいのみ)。中古は自由。 |
| 価格 | 定価(最安)。 | 時価(プレ値)。定価の2倍以上もザラ。 |
| 予約 | 主要店は予約必須の傾向。 | 基本的に不要。いつでも入れる。 |
このように、正規店は「定価で買えるチャンスがあるが、モノがない」、並行店は「モノはあるが、新品の試着は制限され、価格も高い」という特徴があります。
ご自身の目的が「まずはサイズ感を知りたい」のか、「購入を前提に探している」のかによって、訪れるべき店舗を使い分けるのが賢い戦略と言えるでしょう。
お近くの正規店を探す際は、必ず公式サイトで最新の店舗情報を確認することをおすすめします。(出典:ロレックス公式サイト『ロレックス正規販売店検索』)
スポーツモデルは試着できないことが多い
ロレックスに興味を持った方の多くが憧れるのは、やはり「プロフェッショナルモデル」と呼ばれるスポーツタイプの時計たちでしょう。
サブマリーナ、GMTマスターII、エクスプローラーなど、堅牢で男らしいデザインはいつの時代も絶大な人気を誇ります。
しかし、いざ意気揚々と正規店を訪れても、希望のスポーツモデルを試着できないケースが非常に多いというのが冷酷な現実です。
その最大の理由は、単純明快に「在庫が存在しないから」です。
これらの人気モデルは、入荷した瞬間に「待機リスト」の上位にいる顧客や、タイミングよく来店した運の良い顧客へと案内されてしまいます。
そのため、ショーケースに陳列される時間は物理的に存在せず、一般の来店客の目に触れることすらありません。
店員さんに「サブマリーナを見せてください」と頼んでも、「あいにく在庫を切らしておりまして…」という決まり文句が返ってくるのが日常茶飯事なのです。
「それなら展示専用モデルがあるじゃないか」と思われるかもしれません。
確かに、展示専用モデルの導入によって、以前よりは実機に触れられる機会は増えました。
しかし、展示専用モデルのラインナップも店舗によってまちまちです。
すべてのモデル、すべての文字盤カラーが揃っているわけではありません。
「デイトジャストの展示品はたくさんあるけれど、スポーツモデルの展示品は一つもない」という店舗も珍しくないのです。
特に地方の小規模な正規店などでは、展示用の在庫確保さえままならない状況があるようです。
では、在庫豊富な並行輸入店ならどうでしょうか。
先ほども少し触れましたが、ここでも「新品の壁」が立ちはだかります。
スポーツモデルの新品は、定価を遥かに超えるプレミア価格で取引される「資産」のような側面を持っています。
購入者は「完全な新品(Unworn)」の状態を求めるため、お店側も試着による微細な傷(ヘアラインスクラッチ)や、ブレスレットのヨレを極端に嫌います。
その結果、ガラスケース越しに見ることはできても、実際にバックルを締めて腕に巻くという行為は断られることがほとんどなのです。
「腕に乗せるだけ」の試着でもある程度の雰囲気は掴めますが、時計の重心バランスや、ブレスレットが手首に吸い付く感覚、バックルの操作感などを確認することはできません。
これは、これから数百万円の買い物をしようとしているユーザーにとっては、非常に不安な要素です。

中古品であれば、基本的にお店側も試着に対して寛容です。
実際にバックルを締め、手首を回して装着感をテストさせてくれるでしょう。
新品購入を目指している場合でも、まずは中古品でサイズ感を確認し、納得してから新品を探す(あるいは正規店マラソンをする)という手順を踏むことを強くお勧めします。

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デイトナなどの人気モデルを試着する方法

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「キング・オブ・ロレックス」の異名を持つコスモグラフ デイトナ。
このモデルに関しては、試着はおろか実物を見ることさえ叶わない「幻の時計」だと思っている方も多いかもしれません。
確かに、正規店でデイトナを購入できる確率は宝くじに当たるようなものですが、「試着するだけ」であれば、決して不可能なミッションではありません。
ここでは、デイトナの試着を成功させるための具体的なアプローチをご紹介します。
最も王道かつリスクが低いのは、やはり正規店の「展示専用モデル」を狙うことです。
先ほど「展示品もない店がある」と言いましたが、逆に言えば「展示品が充実している店」も存在します。
特に、銀座、表参道、新宿、大阪などの大都市圏にある旗艦店や、百貨店に入っている大型ブティックでは、デイトナの展示専用モデル(特に白文字盤や黒文字盤のステンレスモデル)を用意している確率が比較的高いです。
店員さんとの会話の中で、「いつかはデイトナを手に入れたいと考えているのですが、私の手首のサイズに合うか不安で…もし展示機があれば、サイズ感だけでも確認させていただくことは可能でしょうか?」と丁寧に尋ねてみてください。
もし店舗に展示機があれば、店員さんも「試着だけなら」と快く応じてくれるはずです。
展示機であれば購入を迫られることもありませんし、気兼ねなく重量感や厚みを確認することができます。
次に有効なのが、並行輸入店や中古専門店での「中古品狙い」です。
並行店にはデイトナの在庫が豊富にありますが、新品(数百万円のプレ値がついている個体)の試着はほぼ不可能です。
しかし、中古品であれば話は別です。現行モデル(Ref.126500LN)の中古が出回っていればベストですが、もしなければ一つ前のモデル(Ref.116500LN)でも構いません。
ケースサイズや基本的な装着感に大きな違いはないため、十分に参考になります。
実際にデイトナを試着してみると、多くの人がその「意外な装着感」に驚かされます。
クロノグラフというと「分厚くて重い」イメージがありますが、デイトナのケース厚は約11.9mmと非常に薄く設計されています。
そのため、重心が低く手首に吸い付くようにフィットし、数値(約144g)以上に軽く感じるのです。
「スーツの袖口にもスムーズに収まる」「着けていることを忘れるほど馴染む」といった感想は、実際に腕に乗せてみないとなかなか実感できないポイントです。
試着時にチェックすべきデイトナのポイント
- プッシャーの操作感:ねじ込み式プッシャーのロックを解除し(店員に許可を得てから)、クロノグラフのスタート・ストップボタンのクリック感を確かめる。
- 視認性:白文字盤と黒文字盤では、光の当たり方によってインダイヤルの見やすさが異なるため、実機で見比べるのが理想。
- 厚みと重心:手首を振ってみて、時計ヘッドがぐらつかないか、重心が安定しているかを確認する。
試着だけして帰るのは恥ずかしいのか

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「何も買わないのに、高級店に入って試着だけさせてもらうなんて…」「店員さんに嫌な顔をされるんじゃないか…」そんな不安を感じて、店舗のドアを開けるのを躊躇してしまう方は非常に多いです。
お気持ちは痛いほどよく分かります。
私も最初は、煌びやかな店内の雰囲気に圧倒され、試着を頼む声が震えてしまったものです。
しかし、結論から申し上げますと、試着だけで帰ることは全く恥ずかしいことではありません。
むしろ、ロレックスのような高額商品を、試着もせずに即決で購入する人の方が圧倒的に少数派です。
数千円のTシャツを買うのとはわけが違います。
一生モノのパートナーを選ぶわけですから、何度も試着し、悩み、検討するのは、消費者として当然の権利であり、必要なプロセスなのです。
店舗側の視点に立って考えてみましょう。
正規店の店員さんも、並行店のスタッフも、お客様が「検討中」であることは重々承知しています。
特に正規店においては、在庫がないことが日常茶飯事です。
店員さんは毎日何十人、何百人というお客様に対し「あいにく在庫がございません」と謝り続けています。
そんな中で、「今日はどんな時計があるか見に来た」「将来のためにサイズ感を確かめに来た」というスタンスのお客様が来店されることは、彼らにとってもごく普通の日常風景なのです。
「検討します」「また来ます」と伝えて退店するのは、極めて一般的なフローであり、そこに罪悪感を持つ必要は一切ありません。
店員さんも「はい、お待ちしております」と笑顔で送り出してくれるでしょう。
もし仮に、試着だけで帰る客に対してあからさまに不機嫌な態度を取るような店員がいたとすれば、それはあなたのせいではなく、その店員のプロ意識が欠如しているだけのことです。
そんな店で購入する必要はありません。
ただし、一つだけ守っていただきたいことがあります。
それは「人としての礼儀」です。
対応してくれた店員さんに「ありがとうございました。とても参考になりました」「イメージが掴めました」と感謝の言葉を伝えること。
これだけで、お互いに気持ちよくコミュニケーションを終えることができます。
あなたのその誠実な態度は、店員さんの記憶にポジティブな印象として残り、次回の来店時にプラスに働くことさえあるのです。
堂々と試着し、堂々と「検討します」と伝えて帰りましょう。
適切な服装と入店前の準備ポイント

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「ロレックスに行くのにスーツを着ていく必要はありますか?」という質問をよくいただきますが、これに対する答えは「必須ではないが、綺麗な格好で行くに越したことはない」となります。
ロレックスは高級ブランドですが、あくまでスポーツウォッチをルーツに持つブランドですので、フォーマルなスーツでなければ入店を断られるといったことはありません。
しかし、店員さんも人間です。対面した瞬間の第一印象で、お客様の「属性」を無意識に判断しています。
ここで重要なのは、「清潔感」と「TPO」をわきまえた服装(スマートカジュアル以上)を心がけることです。
具体的には、襟付きのシャツやポロシャツ、プレスの効いたチノパンやスラックス、手入れされた革靴や綺麗なスニーカーなどが好ましいでしょう。
これらの服装は、「私はこの時計を身につけるにふさわしいライフスタイルを送っており、社会的な常識を持った人間です」という非言語的なメッセージを店員さんに伝達します。
逆におすすめできないのが、短パンにビーチサンダル、ダメージの激しいジーンズ、あるいは全身スウェットといったラフすぎる格好です。
もちろん、これらがお洒落であることは理解していますが、ロレックス正規店の空間においては「転売屋(ランナー)」や「冷やかし」と誤認されるリスクが高まります。
特に昨今の転売対策により、店員さんは「本当に時計を愛用してくれる人か」をシビアに見極めています。その判断材料の一つとして、服装が見られているという意識を持つことは戦略的にも重要です。
入店前に必ずやっておきたい「プロの準備」
試着における最も重要かつ具体的な物理的マナー、それは「手首のアクセサリーを外すこと」です。これができるかできないかで、あなたの評価は大きく変わります。
金属製のブレスレット、バングル、大きな石のついた指輪などは、試着の際に時計のケースやブレスレットと接触し、微細な傷(ヘアラインスクラッチ)をつける最大の原因となります。
特に並行店の新品や、個体差のある中古品を扱う場合、店員はこの点を非常に厳しくチェックしています。
入店前、あるいは店員さんに「試着してもいいですか?」と声をかける直前に、自ら進んでこれらのアクセサリーを外してポケットやバッグにしまう動作を見せてください。
たったそれだけのことで、「このお客様は時計の扱いを分かっている」「商品を大切にしてくれる配慮がある人だ」と、店員さんの信頼度が一気に跳ね上がります。
これはどんな高級なスーツを着るよりも効果的な、最強のアピール方法と言えるでしょう。
ロレックスの試着から購入に繋げる戦略
ここからは、単なる試着を超えて、実際に正規店での購入(案内)を引き寄せるための戦略的なお話をしましょう。
いわゆる「ロレックスマラソン」において、試着というプロセスは、在庫確認のついでに行うものではありません。
それは店員さんとの信頼関係(ラポール)を構築するための、最も重要な「タッチポイント」なのです。
店員の本音を探る会話のテクニック

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正規店の店員さんは、日々何十回となく「デイトナありますか?」「サブマリーナありますか?」という質問を浴びせられています。
正直なところ、彼らはこの「在庫確認ロボット」のようなやり取りに疲弊しています。
そのため、入店直後に開口一番で在庫確認だけをするのは、最も避けるべき悪手です。
これは店員さんにとって「私は時計そのものには興味がなく、ただ換金性の高い人気モデルが欲しいだけです」という宣言に等しく聞こえてしまうからです。
では、どうすれば良いのでしょうか。
おすすめのアプローチは、「試着をフックにして会話を広げ、自分のストーリーを伝えること」です。
在庫がないことは百も承知で、あえて展示専用モデルや、在庫のあるクラシックモデルの試着を申し出てみてください。
そして、時計を腕に乗せながら、自然な流れで会話を始めます。
「実は来月で勤続10年になるので、その記念に長く使える相棒を探しているんです」 「30歳になった記念に、一生モノの時計を一つ持ちたいと思いまして」
このように、個人的な購入動機を語ることが極めて効果的です。
ロレックスの店員さんは、「転売リスクのない顧客」を探していると同時に、「顧客の人生の節目を祝うお手伝いがしたい」という販売員としてのプライドも持っています。
「資産価値」や「値上がり」といったキーワードは禁句ですが、「記念日」「昇進」「家族への継承」といったキーワードは、彼らの心に響く魔法の言葉です。
また、試着しながら「やっぱり実物は重厚感が違いますね」「この文字盤の色、写真で見るよりずっと深みがありますね」といった、具体的な感想を伝えることも大切です。
これにより、「この人は本当に時計が好きなんだな」「ちゃんと自分で使うことを想定しているな」ということが伝わり、店員さんの警戒心を解くことができます。
会話が弾めば、店員さんの方から「実は、このモデルであれば入荷の予定がありまして…」といった、思わぬ情報が飛び出すこともゼロではありません。
在庫がなくても試着させてくれた理由
正規店で「あいにく在庫は切らしております」と言われた直後に、「もしよろしければ、こちらの見本品をご試着されますか?」や「別モデルにはなりますが、サイズ感だけでもご覧になりますか?」と提案されることがあります。
在庫がないのに、なぜわざわざ手間をかけて試着させてくれるのか。その意図を深読みしてしまう方も多いでしょう。
これには主に3つの理由が考えられます。
一つ目は、純粋な「ブランド・ホスピタリティ」です。
ロレックスは世界最高峰の時計ブランドであり、その店舗体験(カスタマー・エクスペリエンス)もまた最高品質でなければなりません。
せっかく足を運んでくださったお客様に対し、何も見せずに「ありません」だけで帰すのは、ブランドイメージを損なう可能性があります。
たとえ販売できる商品がなくても、ロレックスの製品の素晴らしさ、重量感、仕上げの美しさを実際に肌で感じてもらい、ブランドのファンになっていただきたいという純粋なサービス精神からの対応です。
二つ目は、「将来の見込み客への種まき」です。
今は在庫がなくても、数ヶ月後、数年後に入荷状況が改善するかもしれません。
あるいは、お客様自身の好みが変わるかもしれません。
その時のために、「あのお店は親切だったな」というポジティブな印象を残しておくことは、店舗にとっても長期的なメリットがあります。
特に、まだロレックスを持っていない「エントリー層」のお客様に対しては、まず製品を知ってもらうことが第一歩となるため、積極的に試着を勧める傾向があります。
そして三つ目、これがマラソンランナーにとって最も重要な要素ですが、「顧客の選定(品定め)」を行っている可能性です。
これは決して意地悪な意味ではありません。
店員さんは、試着という行為を通じて、お客様の「時計への適性」を見極めています。
- 時計をトレーの上で丁寧に扱っているか(雑に扱っていないか)。
- 店員の指示やマナーを守って試着しているか。
- サイズ感やデザインに対して、自分なりの意見やこだわりを持っているか。
- 転売目的ではなく、自身で愛用するイメージを持っているか。
もしバックヤードに案内できる在庫が隠されていたとしても、あるいは近い将来に入荷が見込まれるとしても、それを誰に販売するかは店員(および店舗責任者)の裁量に委ねられています。
試着中の会話や振る舞いが「合格ライン」に達したと判断された場合、その場では買えなくても、次回の来店時に「実は…」と提案がなされるケースは決して珍しい話ではありません。
つまり、試着させてくれたということは、少なくともあなたは「門前払い」の対象ではなく、「将来の顧客候補」として土俵に乗ったと捉えて良いでしょう。
そのチャンスを活かすためにも、誠実で丁寧な対応を心がけることが大切です。
試着の案内は買える前兆なのか判断する
正規店に通い詰めていると、ふとした瞬間に「これは…もしや買える前兆(フラグ)ではないか?」と期待が高まる瞬間が訪れます。
しかし、ぬか喜びに終わらないためにも、どのレベルの対応が脈ありサインなのか、冷静に見極める必要があります。
まず、「展示専用モデルの試着」は、残念ながら購入の前兆とは言えません。
前項で述べた通り、これはあくまでサービスの一環や顧客選定のプロセスであり、在庫の有無とは直接リンクしていないことがほとんどです。
「展示品をつけてみますか?」という提案は、「今は売るものがないけれど、接客はさせていただきます」という意思表示に近いと捉えるのが無難です。
しかし、以下のようなパターンであれば、期待値はグッと上がります。
購入案内が近いかもしれない「脈ありサイン」
- 在庫確認の時間が長い:通常なら即答で「ない」と言われるところ、「少々確認してまいります」とバックヤードに入り、数分間戻ってこない場合。在庫を探しているか、上席と「この客に売ってよいか」を相談している可能性があります。
- 具体的なスペックのヒアリング:「黒文字盤と白文字盤、どちらが第一希望ですか?」「ブレスレットは3連と5連、どちらがお好みですか?」など、在庫がない状態では聞く必要のない具体的な仕様を深掘りされた場合。
- 別室への誘導や上席の登場:試着の流れで個室に案内されたり、店長クラスの人が挨拶に出てきた場合は、商談モードに入っている可能性が極めて高いです。
- 布を被せたトレーの登場:バックヤードから戻ってきた店員さんが、布を被せたトレー(中身が見えない状態)を持っていた場合、その下には案内用の在庫が眠っていることが確定的なサインと言われています。
特に重要なのは、店員さんの「質問の質」が変わった瞬間です。
雑談ベースから、急に「決済方法のご予定は?」「今日はお時間大丈夫ですか?」といった事務的な確認が入った場合、それは心の中で「販売決定」のスイッチが押された合図かもしれません。
とはいえ、これらはあくまで傾向に過ぎません。
過度に期待してガツガツすると、「やっぱり転売屋かも」と警戒されてしまうリスクもあります。
どんなに脈ありに見えても、最後までポーカーフェイスを保ち、謙虚な姿勢を崩さないことが、ゴールテープを切るための最後の秘訣です。
購入判断を即決せず検討しても良いか
運良く購入可能な在庫が出てきた場合、あるいは並行店で素晴らしい個体に出会った場合、その場で購入を即決しなければならないのでしょうか。
「高額な買い物だから、一度持ち帰って家族と相談したい」「頭を冷やして考えたい」と思うのは、消費者として極めて正常な心理です。
しかし、ロレックス市場、特に正規店における人気モデルの案内に関しては、「即決」がほぼ唯一の正解となる厳しい現実があります。
正規店でデイトナやGMTマスターIIなどの人気モデルが案内されるのは、まさに「千載一遇」のチャンスです。
もしそこで「一度持ち帰って検討します」と伝えた場合、店員さんは「そうですか、残念です」と引き下がるでしょう。
しかし、その個体があなたのために取り置かれることは、まずありません(※外商付きの超優良顧客などを除く)。
あなたが店を出た数分後には、次に来店した別のお客様に案内され、即座に売れてしまうでしょう。
正規店において「検討する」という選択肢は、事実上の「購入辞退」と同義です。
次回お店に行った時に「やっぱりあれ買います」と言っても、「もうございません」と言われるのがオチです。
したがって、正規店に行く際は、「もし案内されたら絶対に買う」という覚悟と、決済手段(クレジットカードの限度額確認など)の準備を整えておく必要があります。
一方、並行輸入店や中古専門店であれば、ある程度の「検討」は可能です。
在庫が豊富にあるモデルなら、数日考えたところで売り切れるリスクは低いでしょう。ただし、一点物の中古良品や、相場が急変動している時期の新品に関しては、数日の迷いが命取りになることもあります。
「昨日まではあったのに」「昨日より5万円値上がりしている」といったことが日常的に起こるのがこの市場です。
後悔しないための事前準備
店先で迷わないためには、来店前に「自分の中の購入基準(マイルール)」を明確にしておくことが大切です。
「予算は〇〇万円まで」「傷の状態がこれくらいなら許容する」「〇〇年モデルなら買う」といった基準を決めておけば、いざ目の前に現れた時に、感情に流されず冷静かつ迅速に判断を下すことができます。
装着感や重量バランスを体感する重要性

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ここまで購入プロセスや戦略についてお話ししてきましたが、最後に私が最も強調したいのは、時計そのものの「フィッティング(装着感)」の重要性です。
近年はインターネットやSNSで膨大な情報が得られるため、頭でっかちになりがちです。「Ref.126610LNはケース径41mm、重量約159g」といったスペックデータは誰もが知っています。
しかし、その数値が「あなたの手首でどう感じるか」は、実際に着けてみない限り、誰にも分からないのです。
例えば、同じ「40mm径・重量150g」の時計でも、ケースの厚み、裏蓋の形状、重心の位置によって、体感重量は驚くほど変わります。
重心が低い時計(デイトナなど)は手首に吸い付くように安定し、軽く感じます。
逆に、重心が高い時計(シードゥエラーなど)は、遠心力が働きやすく、手首の上で暴れる感覚があり、数値以上に重くストレスを感じることがあります。
また、ブレスレットの種類と手首の相性も見逃せません。
一般的に、3連の「オイスターブレスレット」は堅牢でスポーティですが、手首の形状によってはバックル付近に隙間ができやすい場合があります。
対して、5連の「ジュビリーブレスレット」はコマが細かいため、どんな手首の形状にも柔軟にフィットし、「液体のような装着感」と称される極上の着け心地を提供してくれます。
しかし、これも「柔らかすぎて頼りない」と感じる人もいれば、「最高に快適」と感じる人もいます。
さらに、金無垢やプラチナモデルを検討している方は、その「異次元の重さ」を覚悟する必要があります。
プラチナのデイトナなどは約280gもあり、これは350ml缶ジュースを常に手首にぶら下げているようなものです。
「資産価値が高いから」という理由だけで購入すると、あまりの重さに日常使いができず、結局タンスの肥やしになってしまう…という悲劇も少なくありません。
「スペック」はカタログに載っていますが、「相性」は現場にしかありません。
どうかネットの評判や資産価値ランキングだけで判断せず、ご自身の手首と対話し、心から「着けていて気持ちいい」と思える一本を選んでください。
それが、長く愛用できる時計と出会うための唯一の真理です。
ロレックスの試着で運命の一本に出会う
ロレックスの試着は、購入への入り口であると同時に、ブランドの世界観を肌で感じる貴重な体験です。
正規店では在庫がなく悔しい思いをすることもあるかもしれませんが、それは世界中の愛好家が通る道です。
マナーを守って通い続け、店員さんとの会話を楽しめるようになれば、いつか必ず「その時」はやってきます。
また、並行店で色々なモデルを比較試着することも、自分の好みや「本当に必要な機能・デザイン」を確立するためには欠かせないプロセスです。
最初は緊張するかもしれませんが、「恥ずかしい」「怖い」と思う必要は全くありません。
店員さんは時計好きのお客様を歓迎してくれます。
ぜひ堂々とお店に足を運び、本物のロレックスをその腕に乗せてみてください。
鏡に映った自分の腕元を見た瞬間の高揚感、ずっしりとした心地よい重み。
それこそが、ロレックスを持つ喜びの始まりなのですから。
