ごきげんよう。With-Time、運営者の「桐生」です。
時計界の頂点に君臨するパテックフィリップですが、憧れの気持ちとともに検索窓に「後悔」や「失敗」といった言葉を入れてしまい、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
一生モノの買い物だからこそ、維持費の負担や資産価値に関するリスク、そして普段使いにおける制約など、購入後に直面するかもしれない現実的な問題について深く知っておきたいと考えるのは当然のことです。
このブログでは、華やかなイメージの裏側にあるオーナーたちのリアルな苦悩や、市場の変化について私なりの視点で掘り下げていきます。
チェックリスト
- 憧れの時計を手に入れた後に感じる日常使いの不便さと物理的な制約
- 想像以上に重くのしかかるオーバーホール費用や維持費の実態
- 2025年の市場データに基づくノーチラスやアクアノートの資産価値変動リスク
- 後悔しないために知っておくべき購入前の心構えと出口戦略
パテックフィリップを買って後悔する理由とは

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「いつかはパテック」と夢見て手に入れたはずが、なぜ手放したくなるほどの後悔を感じてしまうのでしょうか。
その背景には、購入前の期待と購入後の現実との間に横たわる、想像以上に深いギャップが存在します。
ここでは、実際にオーナーたちが直面する精神的、経済的な壁について詳しく見ていきましょう。
一見さんは相手にされない現実と対策
パテックフィリップの正規店、特に銀座や新宿、大阪などの主要都市にあるブティックを初めて訪れた際、多くの人が経験するのが、いわゆる「塩対応」と呼ばれる洗礼です。
意を決して重厚なドアをくぐり、「ノーチラスやアクアノートはありますか?」と尋ねた瞬間、店内の空気が凍りつくのを感じたことはないでしょうか。
店員さんは礼儀正しくも事務的な笑顔で「あいにく在庫はございません」と即答し、会話がそこで終了してしまう。
この冷淡な対応に、自分の存在を否定されたような惨めさを感じ、購入意欲そのものを削がれてしまう「一見さん」は後を絶ちません。
しかし、これは単なる店員の機嫌の問題ではありません。ブランド側には、世界中から押し寄せる転売目的のバイヤー(転売ヤー)を排除し、真に時計を愛用してくれる顧客を守るという厳格なミッションがあります。
初対面の客に対して在庫リストを開示することは、ブランドにとってリスクでしかないのです。
そのため、バックヤードに確認に行くふりをして、実は何も確認せずに戻ってくるといった「儀式」のような対応も、業界では暗黙の了解として行われています。
この現実を知らずに「お金さえあれば買える」と思って入店すると、そのギャップに強烈なストレスを感じることになります。
また、名刺すら渡されず、カタログももらえないまま退店を促されることも珍しくありません。
「顧客リストに載る」ということ自体が、一つの高いハードルとなっているのです。
ネット上の掲示板やSNSでは「店員に見下された」「二度と行かない」といった怨嗟の声が溢れていますが、これもパテックフィリップというブランドが持つ「選別」の側面であり、購入後に後悔しないためには、この入り口の段階での精神的なタフさが求められます。
攻略法として唯一有効なのは、やはり「信頼の構築」です。何度も足繁く通い、時計への情熱を語り、顔と名前を覚えてもらうこと。
そして、いきなり人気モデルを狙うのではなく、在庫があるモデルや、場合によってはレディースモデル、ジュエリーなどを購入し、少しずつ「実績」を積み重ねることが遠回りのようで一番の近道です。
「あなたになら売ってもいい」と店員さんに思わせる人間関係の構築こそが、パテックオーナーへの第一歩なのです。
正規店での門前払いに見るブランドの壁
勇気を出してブティックのドアを開けようとしても、そもそもそのドアが開かない、あるいは入店すら断られる門前払いも、パテックフィリップ購入における大きな障壁です。
近年、多くの正規店では完全予約制を導入しており、ふらっと立ち寄っても「本日はご予約で満席です」と入店を拒否されるケースが増えています。
予約を取ろうにも電話がつながらない、あるいは「新規のお客様の予約枠は現在受け付けておりません」と告げられることもあり、スタートラインに立つことさえ許されない現実に直面します。
仮に入店できたとしても、ショーケースに並んでいるのは「Display Only(展示品)」の札がついた時計ばかりで、実際に購入できる商品は一つもないという状況もザラにあります。
まるで美術館に来たかのような感覚に陥り、「自分は何をしにここに来たのだろう」という虚無感に襲われます。
さらに、一部の店舗や外商ルートでは、人気モデルを購入するための条件として、不人気モデルや高額なジュエリーとのセット購入、いわゆる「抱き合わせ販売」や「抱き合わせ提案」が暗に行われることもあると噂されています。
「ノーチラスをご案内するには、まずはこちらのカラトラバと、奥様へのジュエリーをご購入いただく必要があります」といった直接的な表現ではないにせよ、それに近いニュアンスで「実績作り」を求められるのです。
数千万円単位の資金が必要となるこの商習慣に直面したとき、多くの一般ユーザーは「高いお金を払ってまで、なぜここまで媚びへつらい、不要なものまで買わなければならないのか」という疑問と怒りを感じます。
この理不尽さこそが、ブランドへの純粋な憧れを冷めさせ、「買わなければよかった」「目指さなければよかった」という後悔へとつながる大きな要因となっています。
詳しくは、パテックフィリップで門前払いされない方法|買える人の条件と共通点という記事でも書いていますので、ぜひご覧ください。
つけてる人との格差で感じる疎外感
苦労の末に念願のパテックフィリップを手に入れたとしても、その後に待っているのはオーナー同士の残酷なまでの「格差社会」です。
自分にとっては清水の舞台から飛び降りる覚悟で購入した、一生の宝物であるカラトラバやゴンドーロ。しかし、SNSを開けば、世界中の富裕層が「普段使いの時計」として、数千万円、数億円クラスのグランドコンプリケーションや、希少な限定モデルを惜しげもなく披露しています。
Instagramでの「開封の儀」や、豪華なパーティーでのリストショットを見るたびに、自分の時計が急に色褪せて見えてしまうのです。
また、時計愛好家のオフ会やパーティーに参加した際にも、この格差は顕著に現れます。
腕元にノーチラスの複雑モデルを巻いたVVIP顧客たちが談笑する中で、シンプルな3針モデルを着用している自分が、まるで「エントリー層」や「一般人」として扱われているような疎外感を感じることがあります。
「上には上がいる」という現実は、どの世界にもあることですが、パテックフィリップの世界におけるその天井の高さは、一般人の想像を遥かに超えています。
さらに、時計の造りそのものに対する「相対的剥奪感」も後悔の一因となります。
例えば、A.ランゲ&ゾーネのようなドイツ時計が持つ、徹底的に手作業で装飾された3/4プレートやハンドエングレービングの芸術性と比較した際、パテックフィリップの一部のモデルに見られる、機能美を優先した工業的な仕上げに対して、「価格の割に仕上げが地味ではないか」と物足りなさを感じてしまうユーザーもいます。
隣の芝生が青く見える現象ですが、高額な出費をしているだけに、その小さな不満が「選択ミスだったのではないか」という疑念へと膨らんでいくのです。
一般人が購入後に直面する維持費の壁

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私たちのような一般的な収入の会社員や、多少余裕のある経営者であっても、パテックフィリップを所有し続けることの経済的負担は想像を絶するものがあります。
購入時のイニシャルコストが高いことは覚悟していても、購入後の「ランニングコスト」がここまで重くのしかかるとは、多くの人が予想していません。
時計は精密機械であり、3年から5年に一度のオーバーホール(分解掃除)が必須ですが、その費用は一般的な国産時計や他のスイスブランドとは桁が違います。
例えば、最もシンプルな自動巻き3針モデルであっても、正規オーバーホールの基本技術料だけで約55,000円以上かかります。
しかし、これはあくまで「基本料金」であり、何の問題もない場合の最低価格です。
実際には、長年の使用で摩耗した歯車、リューズ、パッキンなどの部品交換が必要となり、これに数万円から十数万円が加算されます。
さらに、多くのオーナーが希望する外装の研磨(ポリッシュ)を追加すると、プラス90,000円前後の費用が発生します。
結果として、一度のメンテナンスで15万円から20万円、複雑時計になればそれ以上の請求書が届くことになります。
| 項目 | 費用の目安(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| オーバーホール基本料(自動巻き) | 約55,000円〜 | キャリバーにより異なる |
| 外装研磨(ケース+ブレス) | 約90,000円 | 新品同様の輝きを取り戻す |
| 部品交換代 | 数万円〜数十万円 | 摩耗状況により変動 |
| 合計目安 | 150,000円〜250,000円 | 3〜5年ごとに発生 |
「5年ごとに20万円」という出費は、月額に換算すれば数千円かもしれませんが、まとまった現金が出ていく痛みは強烈です。
さらに、古いモデルや複雑な機構を持つモデルの場合、国内のサービスセンターでは修理ができず、スイス本国送り(ジュネーブ送り)となるケースがあります。
そうなると、高額な輸送料や保険料が上乗せされるだけでなく、見積もりが出るまでに数ヶ月かかることもあります。
「維持費の高さに耐えきれず、子供の教育費のために手放した」という話は、決して大げさな作り話ではなく、多くのオーナーが直面するシビアな現実なのです。
実は壊れやすい繊細な構造と修理費

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「パテックフィリップは代々受け継ぐ時計だから、さぞかし頑丈なのだろう」というイメージを持っていると、その繊細さに驚かされることになります。
実用時計の王者であるロレックスが、堅牢なオイスターケースで日常のラフな使用に耐えうるのに対し、パテックフィリップ、特にカラトラバなどのドレスウォッチは、あくまで「工芸品」としての側面が強く、物理的な強度は決して高くありません。
まず問題になるのが防水性能です。多くのモデルが「30m防水(日常生活防水)」程度にとどまっており、これは汗や小雨に耐えられるレベルであって、手洗いの水流を直接当てたり、プールに入ったりすることは厳禁です。
夏の暑い日に汗をかいたまま着用することすらためらわれ、結果として「夏場は使えない時計」となってしまいます。
また、美しい鏡面仕上げが施された18Kゴールドやプラチナのケースは非常に柔らかく、デスクワークで机にコツンと当てただけでも簡単に凹みや擦り傷がつきます。
ステンレススティール製のノーチラスでさえ、ベゼルの広大な鏡面部分は「傷の展覧会」になりやすく、神経質なオーナーにとってはストレスの塊となります。
さらに、磁気帯びのリスクも無視できません。
現代社会はスマートフォンやPC、バッグのマグネットなど磁気で溢れていますが、パテックの多くのムーブメントはこれらに敏感に反応し、精度不良を起こします。
そして万が一、落下などで故障させた場合の修理費は青天井です。ガラス(風防)が割れて文字盤に傷がつこうものなら、文字盤交換だけで数十万円が飛びます。
修理期間の長さにも注意
修理やオーバーホールでスイス本国送りになると、手元に戻ってくるまで半年から1年以上かかることもザラにあります。
「高いお金を出して買ったのに、所有期間の半分は修理に出していて手元にない」という空虚感。その間も時計の価値は変動し、自分の年齢も上がっていく。
この「不在の時間」こそが、オーナーシップを希薄にさせ、後悔を感じさせる静かな要因となります。
パテックフィリップを買って後悔するのは資産価値への期待感?

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近年の高級時計ブームにおいて、パテックフィリップは「投資対象」としても注目されてきました。
しかし、2024年から2025年にかけての市場データは、かつての「買えば必ず儲かる」という神話が崩れつつあることを示しています。
ここでは、資産価値への期待が裏切られたときに感じる後悔について解説します。
ノーチラスの相場下落が招く損失リスク
パテックフィリップの代名詞とも言えるラグジュアリースポーツウォッチ、「ノーチラス」。
一時期は定価の3倍、4倍という異常なプレミア価格で取引され、「時計界のビットコイン」とまで呼ばれました。
しかし、そのバブルは明らかに弾けつつあります。
特に市場のベンチマークとなる3針のステンレスモデル(Ref.5711/1Aなど)の価格推移を見ると、2022年のピーク時には2,000万円を優に超えていた相場が、2024年から2025年にかけてじわじわと、しかし確実に下落トレンドを描いています。
例えば、2024年末には中古市場で底堅いと思われていた1,600万円台の防衛ラインが、2025年に入ってから脅かされています。
わずか数ヶ月で数十万円から百万円単位の含み損が発生する状況は、純粋な時計ファンならいざ知らず、「資産保全」や「利ざや稼ぎ」を目的に高値圏で購入した投資家層にとっては悪夢以外の何物でもありません。
「寝かせておけば上がる」と信じて金庫に眠らせていた時計が、日々その価値を切り下げていく恐怖。
焦って売ろうとしても、下落局面では買い手がつかず、足元を見られて買い叩かれるという負のスパイラルに陥ります。
この下落の背景には、世界的な金利上昇による投資マネーの引き上げや、主要市場である中国経済の減速が大きく関与しています。
もはや「ノーチラスなら安心」という定説は通用せず、ハイリスク・ハイリターンの投機商品としての側面が露わになっているのです。
幻想だった資産価値と今後の展望
多くの人が抱いている「パテックフィリップは資産価値が下がらない」という認識は、特定の時期と特定のモデルにのみ当てはまる幻想に過ぎません。
2025年の最新データを見ても、スイス時計の輸出全体が苦戦を強いられていることが分かります。
スイス時計協会(FH)が発表した統計によれば、2024年のスイス時計輸出は前年比で減少傾向にあり、特に高級時計の主要消費地であった中国・香港市場の落ち込みが顕著です。
このマクロ経済的な逆風は、パテックフィリップのようなトップブランドにも無関係ではありません。
これまでは需要が供給を遥かに上回っていたため、価格決定権は売り手(ブランドや既存オーナー)にありましたが、現在はそのパワーバランスが逆転しつつあります。
実需層(本当に時計を愛し、使用する人々)が購入できる価格帯を超えて高騰しすぎた相場は、投資マネーが去った後、実需に基づいた適正価格へと修正される過程にあります。
今後の展望としても、かつてのような爆発的な右肩上がりを期待するのは楽観的すぎるでしょう。
買えば儲かる時代は終わり、これからは「どれだけ損を抑えて楽しめるか」、あるいは「リセールを気にせず一生添い遂げられるか」という本質的な価値観が問われる時代に入ったと言えます。
このパラダイムシフトに気づかず、過去の成功体験にすがって購入すると、痛い目を見ることになります。
(出典:スイス時計協会FH『2024年のスイス時計輸出状況』)
在庫過多で下落する中古市場の実態

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市場のメカニズムにおいて、通常は「在庫が減れば価格が上がる」というのが鉄則です。
しかし、2025年のパテックフィリップ市場、特に二次流通(中古)市場では、この経済原則が崩れつつある奇妙な現象が起きています。
これを専門的な視点で見ると、「需要の蒸発」が供給の減少スピードを上回っている状態と言えます。
具体的には、ある人気モデルの中古在庫が市場から一時的に消えたとします。
従来であれば、次に出品される個体は、枯渇感を背景により高い価格で設定されました。
しかし現在は、在庫がゼロになった後に出てきた新しい個体が、以前よりも安い価格で売り出されるというケースが散見されます。
これは、売り手が「今の価格ではもう売れない」と判断し、在庫リスクを避けるために弱気の価格設定を余儀なくされている証拠です。
買い手側の購入意欲が著しく減退しており、売り手が価格を下げて歩み寄らなければ取引が成立しない、完全な「買い手市場」へとシフトしているのです。
また、アクアノート(Ref.5167A-001)のような人気モデルであっても、その相場は極めて不安定です。
短期間で数百万円単位の乱高下を繰り返しており、昨日までは高値で売れていたものが、今日は買い手がつかないということも珍しくありません。
「いつ暴落するか分からない」という恐怖心から、多くの投資家や転売目的の保有者が売り急ぐ動きを見せており、これがさらなる相場の下押し圧力となっています。
常にスマートフォンで相場表をチェックし、一喜一憂する日々。
それは本来、時計という趣味がもたらすべき安らぎとは対極にある、ストレスフルな生活です。
カラトラバのリセールで定価割れする罠
パテックフィリップを購入する際、最も注意しなければならないのが「モデルによるリセールバリューの格差」です。
メディアやSNSで話題になるのは、定価の数倍で取引されるノーチラスやアクアノートばかりですが、これらはブランド全体のほんの一部の例外に過ぎません。
パテックフィリップの真髄とも言えるドレスウォッチコレクション、「カラトラバ」や「ゴンドーロ」、あるいは「年次カレンダー」などのコンプリケーションモデルの多くは、二次流通市場において定価を割り込むことが一般的であることを知っておく必要があります。
正規店で新品を購入できたという高揚感も束の間、いざ事情があって手放そうとした時、提示される買取価格に愕然とするオーナーは後を絶ちません。
例えば、定価400万円で購入したカラトラバを専門店に持ち込んだところ、査定額が200万円台、場合によっては半値近くまで下がるという現実は決して珍しいことではないのです。
これは、正規店の定価にはブランド料や流通コストが含まれているのに対し、中古市場の価格は純粋な需要と供給で決まるためです。
スポーツモデル以外の需要は限定的であり、買い手がつきにくいというシビアな現実があります。
「パテックなら何でも資産になる」という甘い言葉や思い込みを信じて、不人気モデルやドレスウォッチを投資目的で購入すると、出口戦略で大きな痛手を負うことになります。
この「リセールバリューの罠」に嵌まり、数百万円の損失を払って撤退する羽目になったとき、多くの人が「こんなはずではなかった」と深い後悔を抱くことになるのです。
- カラトラバ全般(特に小ぶりなモデルや旧型)
- ゴンドーロ、ゴールデン・エリプスなどの異形ケース
- 一部のグランドコンプリケーション(定価が高すぎて買い手が限られる)
- レディースモデル全般
売却ペナルティのリスクと損切りの判断

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維持費の負担や相場の下落に耐えきれず、時計を手放そうと考えた時、オーナーの前に立ちはだかる最後の壁が「売却ペナルティ」の噂です。
パテックフィリップは顧客管理を徹底しており、正規店で購入した個体が短期間で中古市場に流れた場合、シリアルナンバーから元の購入者が特定され、その顧客は「ブラックリスト」入りするという話がまことしやかに囁かれています。
一度ブラックリストに入れば、今後二度と正規店でパテックフィリップを購入することはできなくなります。
このペナルティへの恐怖が、損切りの判断を鈍らせます。
「今売れば損失は確定するが、これ以上の傷は浅くて済む。しかし、売ってしまえば正規店との縁が切れてしまうかもしれない」というジレンマ。
将来的にまたノーチラスなどの人気モデルを案内してもらえる可能性(あくまで可能性)に賭けて、含み損を抱えたまま維持費を払い続けて保有するか、それともきっぱりと関係を絶って現金化するか。
この「囚人のジレンマ」のような状況に追い込まれること自体が、精神的な負担となります。
それでも売却を決断した場合、どこに売るかも重要です。
近所の総合リサイクルショップやチェーンの買取店では、パテックフィリップの希少な文字盤の違いや、付属品の完備状況、コンディションの微細な差を正当に評価できない可能性があります。
結果として、専門店の相場よりも数十万円安く買い叩かれるリスクがあります。
損切りをするのであれば、パテックフィリップの取り扱いに精通し、世界中に販路を持つ時計専門店を選ぶことが、最後の最後で後悔を上塗りしないための必須条件です。
パテックフィリップで後悔を避けるために
ここまで、パテックフィリップ所有に伴うネガティブな側面、すなわち「後悔」の構造について、経済的・心理的な観点から厳しく書き連ねてきました。
しかし、誤解していただきたくないのは、パテックフィリップという時計自体は、間違いなく世界最高峰の芸術品であり、その価値は揺るぎないものであるということです。
問題なのは、時計そのものではなく、私たちの「過度な期待」と「現実」のミスマッチにあります。
「資産価値が上がるから」「ステータスになるから」「人から凄いと言われたいから」。
そのような動機で購入すると、相場が下がった時や、維持費の請求が来た時に、必ず後悔します。
逆に言えば、たとえ資産価値がゼロになっても、維持費がかさんでも、「この時計の美しさを毎日眺められるなら幸せだ」と思えるなら、それは最高に幸福な買い物になります。
後悔を回避するための唯一の解は、他者の評価軸(市場価格やSNSのいいね数)を捨て、自分自身の評価軸(主観的価値)で時計を選ぶことです。
そして、購入前には必ず以下の3点を自問自答してください。
購入前の最終チェックリスト
- 経済的リスクの受容: 価値が半減しても、5年ごとに20万円の維持費がかかっても、生活に支障はないか?
- 使用環境の適合: 自分のライフスタイル(服装、仕事、行動範囲)で、その時計を無理なく使えるか?
- 愛着の源泉: 資産価値やブランド名を除外しても、その時計のデザインや機構を愛せるか?
パテックフィリップは「父から子へ、世代を超えて受け継がれる時計」です。
10年、20年という長い時間軸の中で、相場の変動など些末なことだと思えるくらいの深い愛情を持って接することができる人だけが、真のパテックオーナーとして、後悔のない豊かな時間を刻むことができるのです。
